書評18 さのすけーその6 【王とサーカス】米澤 穂信
「人生は困難な仕事だ、それを生きたまま終えられる者は一人いない」
byハーバード・フランケル
あらすじ
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ネパールへ取材の為やって来た雑誌ライター太刀洗万智。
その折、ネパールで王族による同胞殺人が起き、ネパールは混乱の極致に陥る。元々のネパールへ来た目的とは異なるが、世界が注目する事件の現場にリアルタイムで身を置く万智は事件を記事にしようと取材を始める。
そして、取材を申し込んだ軍人が取材の翌日「INFORMER(密告者)」と言う単語を体に刻まれた死体として見付かる。その死体を、警察より早く見付けた万智は、このまま取材を続けるべきなのか?そして自分も狙われているのでは無いか?
迷いながら、歩みを続けていく
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あらすじ終了
去年の「満願」から二年連続の「このミステリーが凄い」一位おめでとうございます!!
事件に派手さは無い。派手さなら作中に起き、史実であるネパール王族殺害事件の方が遥かに大きい。
この事件を史実と知っている人ならどうすんだ?と思うだろう
そして、この事件を史実と知らない人もどうすんだ?と思うだろう
この作品のラストに描かれる、言葉の威力は凄いデカい。平和な生活を生きる己に揺さぶりを掛ける。思わず目を背けたくなり、吐き気が込み上げてくる。この世界の現状が文書から己の頭に浮かんで来るからだ。
内容にグロさはこれぽっちも無いのにである。
太刀洗万智が言葉につまりながら、そして迷いながら出して行く答えを私達は一緒に追って行く。それはさながら、サーカスの演者を見ている観客のようにである。
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