書評70回目 kk-その14【熊の場所】舞城王太郎
3作収録の短編集です。
この作者の作品はほとんど全て口語体で、リズミカルにテンポ良く読めてしまいます。
そして、ところどころに貼られた「これって伏線?」みたいな伏線が後々グッと効いてくる感じ。
ミステリー出身の方なので、どの作品もミステリーの形は一応取ってはいるものの、なぜこの世には人の命が奪われるような暴力が存在してしまうのかという究極の謎に試みており、しかもそんな「世界」の哀しさをきちんと表現しているため、単に人が死んでその謎解きを行うというだけではないのがとても好きです。
口語体での表現の為、全然知性は感じさせない仕様になっているのですが、ちりばめられた言葉遊びやなにかわからないけれども、とにかくすごく頭が良いんだろうなこの人は!と感じさせてくれる作者です。
『バット男』は、社会的弱者に肉体的な危害を加えることでしか精神を保てない弱い人間と、どうしようなもいほどの馬鹿なカップルの救いようのない物語ですが、作者の表現している愛情と他者への攻撃性に共感を覚えてしまいます。
他の作品もまたの機会に!
kk
0コメント