書評71回目 ぬい-その4【ガダラの豚】中島らも

今回私がオススメする本は、中島らもの「ガダラの豚」という小説。某まとめサイトで推薦してあったので読んだが、かなり面白い。中島らもはエッセイなどを多く書いているようで、小説はあまり書いていないようだ。が、この【ガダラの豚】は小説のジャンルでありながら、ルポルタージュのような、まるで現地に行って取材をしてきたかのような緻密な描写がされてあり、話に説得力がある。読んでいると、その世界に自然と引き込まれてしまうのだ。

大生部(おおうべ)教授という民族学者とその妻子を軸とした関係者が登場人物で、話は三部作になっている。一部は大生部の妻がひっかかってしまった親興宗教の実態を暴くという、新興宗教とマジックの関係についてである。二部はアフリカを舞台として、大生部一家とその関係者などをメインパーソンに、アフリカの呪術についてのテレビ番組を撮るのだが…といった内容。そして三部は、これまでの内容の集大成といったところである。

話のジャンルは、内容が盛り沢山なので決めづらいが、エンターテイメントとミステリーが合わさった感じだと思う。

内容も面白いのだが、登場人物の掛け合いや描写にもユーモアがあり、つい笑いそうになる場面も多い。しかし読み進めていくうちに、話全体の底に流れる不穏な空気が徐々にあらわになっていく。その様が、読み手に一種の緊張感を与える。そこが面白いよなあ、と思いながらページをめくっていった私だった。

少し古い作品だが、全然楽しめるし、とても読みやすい。オカルト好きや文化人類学好きなどには特にオススメしたい作品だと思う(もちろんそれ以外にも!)。

Book reviewer友の会

好きな本を月~金の平日、曜日担当メンバーが書評または、感想を上げます。 金曜だけは、月一メンバーが担当するんで、変則的!! 担当メンバー さのすけ MRX KK ado ぬい うさちゃん

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