書評30回目 kk-その7【ガラスの動物園】テネシー・ウィリアムズ
以前、知人からオススメされた戯曲で、戯曲はト書きが少なく、登場人物の心理描写を読み解くのに時間がかかるため、無意識に避けていたのですが、この作品は心理描写が丁寧でとても読みやすかったです。
登場人物は、子供の将来を心配するあまり口うるさくなってしまう母・身体的なコンプレックスの為に非常に内向的になってしまった姉・惨めな人生から抜け出したい、この家から出ていきたいと思っている語り手、そして語り手から家に招かれる好青年。
主にこの4人でお話は進んでいきます。
語り手が過去を振り返る構成なのですが、物語が進む毎に、家族の歪みが浮き彫りになっていきます。
父親の二の舞にならないように口うるさく構う母と語り手との対立。
海を越えた土地での何年も前の作品なのに、現代日本でも起こり得ることだなぁと思います。
内向的な姉はローラといい、身体的なコンプレックスのせいで、脆く、でも純粋な心を持っているのですが、その心がしばしば、彼女が集めたガラスの動物たちに例えられます。
家に招かれる好青年はかつてローラが密かに憧れていた青年で、内向的なローラが一生懸命頑張って彼と接点を持とうと話す姿はとても健気できらめいて見えました。
ローラの恋心はどうなるのか、母親と息子の対立はどうなるのか、ひとつの歪な形をした家族の物語、ぜひ読んでみてください。
kk
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