MRX その6 きよしこ 重松清
小さいときから本に育てられてきたが、これほど自分の気持ちを可視化・代弁してくれた本は今までになかったし、本を読んで泣きそうになることもなかった。小さい頃からの『普通に話せる人が羨ましい』という恥ずかしくて誰にも話せなかったモヤモヤした劣等感を受け止めてもらい自分を肯定、理解してくれたような気がした。
わたしは吃音者だ。昔よりはだいぶ日本語が話せるようになったが、今でも声を張り上げたり、カラオケボックスの電話が嫌いだ。、しかし通訳になりたくて日夜勉強をしている。聞き取れるし、発音も褒められる。また返す言葉もわかる。語学を認めてもらったこともある。しかしたまにどうしても吃音で話せなくなる時がある。どんなに努力しても『どうせ聞き取れないし話せないんでしょ?』と、思われるのが悔しくて泣いたことなんてしょっちゅうあった。
落ち着いて話せば大丈夫とか、気休めの言葉がどんなに辛いか吃音じゃない人にはきっとわからない。
大事なときに話せなくなるようじゃ通訳なんか勤まらない。と、いっそ諦めようかと迷う日々だ。
そういう悔しい気持ちをこの本の主人公は分かってくれている。
誰よりも分かってくれているから、やっぱりまだまだ頑張ろうかな、と思わせてくれる。とことん頑張って無理なら諦めようかと思わせてくれる。
必要としてくれている人がいるならやっぱり頑張ろうかなと思わせてくれる。
これから迷ったときにわたしは何度も読み返すだろう。わたしに勇気をくれた一番のパートナー的存在の小説だ。
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