書評34回目 kk-その8【こころ】夏目漱石
「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」
夏目漱石【こころ】の一節です。
「私」のこの言葉をきっかけに、Kの運命はあの結末へと動き出したのかもしれません。
他人を羨んだり、妬んだり、尊敬したり、敵わないなとおもったり、人間であるかぎりはそういった思いを捨てられないと思います。
私もご多分にもれず、誰かの良いニュースをきいて、良かったね、という思いと、いいなぁという思いを抱く時がよくあります。
もちろん、純粋に良かったね〜!って時もあるんですけどね!
そういった相反する思いは、その相手が近しい人であればある程、感情的に自分を揺さぶってくる気がします。
この物語の「私」がした判断やとった行動は、うわ〜最低だな、と思う反面、人間誰しもが通る可能性があるものだと思うんです。
でも、私達はこの物語を読むことによって、自分が感情的に動いた結果、周囲の人たちがどうなるか、自らがどれだけ後悔するか、主人公に深く感情移入すればするほど実感できる。素晴らしい日本人の感性の道徳教科書だと思います。
この後、青年と「私」は再会することができたのか、とても気になります。
kk
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